死神を葬れ

死神を葬れ (新潮文庫) 表紙には全然そそられなかったんですよ。なんかこう、ピンとくるものがなくて。でも、裏の帯を見てびっくり。マイクル・コナリー、ドン・ウィンズロウ、ハーラン・コーベンと、わたしの好きな作家の名前が3つも並んでるじゃありませんか。どこにでも顔を出してるコナリーのコメントはというと――

 ジョッシュ・バゼルは非情の弾丸そのままにこの作品で私を吹き飛ばした。

 うーん、読み終えたいま、これを読むと、はっきり言って弱い(おまえが言うなよって感じですが(^^;))。ドン・ウィンズロウはというと――

 『死神を葬れ』は、読んだら凍っちまいそうにクールだ。参った。

 これはなかなか的を射てます。でも、いちばんぐっどなのはハーラン・コーベン。

 抜群の疾走感、ぶっとんだユーモア、流血のバイオレンス、それに、それに……ああ、もどかしい。こんな賛辞を読んでる暇があったら、さっさとなかを読んでみてくれ。先にレジで待ってるから!

 コーベンくん、しっかり読んでますね~。(^^;) そうなんですよ、もう読み始めたらとまりません。

 で、表紙の話に戻るけど、イラストでわかるように、主人公は男性医師。ニューヨークのマンハッタン・カトリック総合病院に勤めるピーター・ブラウンという研修医なんですが、実は彼には秘めた過去があって、それがぶっとぶような過去なんです。そのピーターが、回診中にひとりの末期癌患者と遭遇したことから絶体絶命のピンチに立たされ、状況を打開すべく駆けまわるわけなんですが、これがもう、並みのサスペンスの展開じゃないんですよっ。研修医としての仕事もこなしつつ、窮地を打開する道を探るという、ちょっとオフビートなテイストがなんとも言えません。

 寝不足状態で勤務をこなす研修医の日常が実にリアルで、ところどころに挿入される専門的な蘊蓄も妙に板についていて、いったいこの作者は何者? と思ったら、ご本人は医学部卒業で、現在はカリフォルニア大学で研修医として勤務中なんですって。そりゃ、まあリアルだわなあ。

 軽妙な語り口とオフビートな味わいが魅力の作品だけど、同時にバイオレンスものでもあって、凄惨な場面もけっこうあります。とくに、絶体絶命のピンチに陥った主人公が取った行動は、もう、うげーとなるほど痛そうで……その場面、わたしはベッドに寝っ転がって読んでたんですけど、お尻がむずむずしてきちゃって、じっと横になっていられませんでした。

 でもでも、すごーくおもしろいです。コーベンの言うとおり、「さっさとなかを読んでみてくれ」ですよ。

■書誌情報
『死神を葬れ』ジョシュ・バゼル/池田真紀子訳/新潮文庫(2009.08.01発行)
"BEAT THE REAPER" by Josh Bazell (2009)

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International Thriller Award Winners

The Bodies Left Behind: A Novel Child 44 The Darker Mask

 International Thriller Writers(ITW) が主催する2009年度 International Thriller Awards の受賞作が発表になりました。

BEST THRILLER OF THE YEAR
 THE BODIES LEFT BEHIND, Jeffery Deaver

BEST FIRST NOVEL
 CHILD 44, Tom Rob Smith

BEST SHORT STORY
 "The Edge of Seventeen", Alexandra Sokoloff (THE DARKER MASK)

 その他の部門はこちらを参照ください。

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ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ

ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ (ヴィレッジブックス) “ジョー・R・ランズデール絶賛!”の帯に、こってり濃ゆくて、えげつない話かと思いこんで覚悟して読んだところ……これって……思いっきりコージーだよね。まあ、主人公は元大工というガテン系の男性で、しかも暴力沙汰をおこして服役、現在は仮釈放中の身という設定をコージーと言っていいのか迷うけれど、主人公はなかなかにナイスガイだし、地域の人との交流がしっかり描かれているし、登場人物のキャラも立ってるし、全体としてとてもすがすがしいんです。

 仮釈放中の主人公テリー・サルツは親友のダニーのもとに身を寄せ、近くのピザ屋で配達係として働きはじめる。すぐに仲間とも打ち解け、また、元大工の腕を見込まれて、ちょっとした大工仕事も舞い込んで、順調に更正への道を歩き出した矢先、同じく配達係のウィットネス、ことエド・ハヌスが店の駐車場で刺殺体となって発見される。警察の捜査は遅々として進まず、テリーは店の仲間とともに犯人捜しに乗り出すのだが……。

 正直、事件そのものはどうでもいいというか、話を進めるための道具でしかない感じなんですよね。“あ、こいつが犯人だ”とぴんときたやつが本当に犯人で、かなり脱力(^^;)。でも、なんて言うのかなあ、この本の魅力はテリーと、その仲間たちの和気藹々とした雰囲気じゃないかと思うんです。

 主人公のテリーはもさもさの黒い長髪をひとつに束ねて、両端が垂れ気味の口ひげを生やしていて、格子柄のネルシャツにジーンズ、足もとはハイカットか作業靴と、ちょっと見には怖い風体なんだけど、大工という仕事をこよなく愛するナイスガイ。彼に手を差しのべる親友のダニーも、ピザ屋で同僚となるバンプやグラフも裏表がなくて、絵に描いたような“いいやつ”。とにかく、ほとんどの登場人物が一癖もふた癖もあるけど、とてつもなくいい人ばかり。ふだん、ねじくれた連中の話ばかり読んでるわたしじゃなくても、世の中そんなにうまく行くかよと言いたくなるような展開なんだけど、いまの世の中ではかえってこういう話が新鮮に思えちゃうから不思議です。語り口のせいなのか、主人公の魅力なのか、ちっとも陳腐な感じがしないしね。

 これ、シリーズになっていて、あと2冊出ているそうなんですが、ぜひ訳してほしいなあ。だって、テリーと別居中の妻とはどうなるのかが気になるんだもの。気になると言えば、弁護士のバドの妹のマイクの存在も異様に気になります。いろんな意味で強烈なわりには、出番少なすぎ。

■書誌情報
『ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ』L・T・フォークス/鈴木恵訳/villagebooks(2009.05.20)
COLD SLICE by L. T. Fawkes(2003)

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用もないのに

用もないのに 新聞の広告で奥田英朗の新作旅行エッセイ集が出たと知り、すぐに買ってしまいました。書き下ろしではなく、《ナンバー》や《野性時代》など、複数の雑誌に掲載された文章をまとめたもの……なんですが、あいかわらずおもしろいですー。帯の“笑えますって”のコピーに偽りなしです。

 なかでも受けちゃったのが、「おやじフジロックに行く。しかも雨……」編。もうタイトルまんま、当時40代後半の奥田さんがフジロック・フェスティバルに参戦したときのルポなんですが、導入部の文章がもろにわたしの気持ちを代弁しているみたいで、思わず苦笑い。ニール・ヤングやスティーヴ・ウィンウッドの出演に心動かされるものの、“しかし、おやじの腰は重いのである。ロックの一線をとっくにリタイヤした身に、新幹線に乗って苗場の会場まで行くだけの情熱はない”と言い訳し、行動に移すことがなかった経緯が語られるわけですが、わかりますよねー、この気持ち。

 そんな奥田さんが若い編集者に焚きつけられ、原稿を書くという名目のもと2005年のフジロックに出かけるんですが、もー、ちょっとトシのいったロック好きなら、思わず「そうそう!」とうなずいちゃう箇所多数。あの出不精でものぐさな奥田さんが行ったんだから、とわたしもちょこっとその気になったりしたけれど、今年の出演者にはいまひとつそそられず。ふん、おばさんの腰はおやじ以上に重いんですよ!

■書誌情報
『用もないのに』奥田英朗/文藝春秋(2009.05.15発行)

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アンソニー賞候補作発表

 アンソニー賞のノミネート作が発表になりました。おもな部門のノミネートは以下のとおり。

最優秀長篇賞
 TRIGGER CITY, Sean Chercover
 THE BRASS VERDICT, Michael Connelly
 RED KNIFE, William Kent Krueger
 THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO, Stieg Larsson
 THE CRUELEST MONTH, Louise Penny

最優秀処女長篇賞
 PUSHING UP DAISIES, Rosemary Harris
 STALKING SUSAN, Julie Kramer
 THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO, Stieg Larsson
 DEATH OF A COZY WRITER, G.M. Malliet
 CHILD 44, Tom Rob Smith

最優秀ペイパーバック賞
 THE FIRST QUARRY, Max Allan Collins
 MONEY SHOT, Christa Faust
 STATE OF THE ONION, Julie Hyzy
 IN A DARK SEASON, Vicki Lane
 SOUTH OF HELL, P.J. Parrish

最優秀短篇賞
 "The Night Things Changed", Dana Cameron(from "WOLFSBANE AND MISTLETOE")
 "A Sleep Not Unlike Death", Sean Chercover (from "HARDCORE HARDBOILED")
 "Killing Time", Jane K. Cleland (from AHMM November)
 "Skull and Cross Examination", Toni L. P. Kelner (from EQMM February)
 "Scratch a Woman". Laura Lippman (from "HARDLY KNEW HER")
 "The Secret Lives of Cats", Kristine Kathryn Rusch (from EQMM July)

 その他の部門についてはこちらをごらんください。受賞作の発表は10月17日におこなわれます。

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マカヴィティ賞ノミネート

〈ミステリ・リーダーズ・インターナショナル〉が選出する2009年マカヴィティ賞のノミネートが発表になりました。おもな部門のノミネートは以下のとおり。

Best Mystery Novel
 TRIGGER CITY, Sean Chercover
 WHERE MEMORIES LIE, Deborah Crombie
 THE PRICE OF BLOOD, Declan Hughes
 THE DRAINING LAKE, Arnaldur Indridason
 CURSE OF THE SPELLMANS, Lisa Lutz
 THE CRUELEST MONTH, Louise Penny
 THE FAULT TREE, Louise Ure

Best First Mystery
 FINDING NOUF, Zoe Ferraris
 THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO, Stieg Larsson
 DEATH OF A COZY WRITER , G.M. Malliet
 CALUMET CITY, Charlie Newton
 AN INNOCENT CLIENT, Scott Pratt
 A CARRION DEATH, Michael Stanley
 THE BLOOD DETECTIVE, Dan Waddell

Best Mystery Short Story
 "The Night Things Changed", Dana Cameron (in "WOLFSBANE AND MISTLETOE")
 "A Sleep Not Unlike Death", Sean Chercover (in "HARDCORE HARDBOILED")
 "Keeping Watch Over His Flock", Toni L.P. Kelner (in "WOLFSBANE AND MISTLETOE")
 "Scratch a Woman", Laura Lippman (in "HARDLY KNEW HER")
 "Between the Dark and the Daylight", Tom Piccirilli (inEQMM, Sep/Oct 2008)

Sue Feder Memorial Historical Mystery
 A ROYAL PAIN, Rhys Bowen
 STEALING TRINITY, Ward Larsen
 THE WHISKEY REBELS, David Liss
 VEIL OF LIES, Jeri Westerson
 COMPANY OF LIARS, Karen Maitland
 NOX DORMIENDA, Kelli Stanley

 受賞作の発表は10月15日~18日にインディアナポリスで開催されるバウチャーコンにて。

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アガサ賞受賞作決定

The Cruelest Month: A Three Pines Mystery (Three Pines Mysteries) Death of a Cozy Writer (A St. Just Mystery) Wolfsbane and Mistletoe

 マリス・ドメスティック主催によるアガサ賞受賞作が決定しました。主要3部門の結果は以下のとおり。

最優秀長篇賞
 THE CRUELEST MONTH, Louise Penny

最優秀処女長篇賞
 DEATH OF A COZY WRITER, G.M. Malliet

最優秀短篇賞
 "The Night Things Changed", Dana Cameron (from WOLFSBANE AND MISTLETOE)

 その他の部門はマリス・ドメスティックの公式サイトをごらんください。

 ルイーズ・ペニーは2年連続の受賞ですね。すごい、すごい。でも、わたしはちょっと苦手。

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MWA賞受賞作決定

Blue Heaven The Foreigner China Lake: An Evan Delaney Novel (Evan Delaney Mysteries)

 アメリカ探偵作家クラブが主催する2009年MWA賞の受賞作が決定しました。主要4部門のノミネートは以下のとおり。

最優秀長篇賞
 BLUE HEAVEN, C.J. Box
(訳書:『ブルー・ヘヴン』C・J・ボックス/真崎義博訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)

最優秀処女長篇賞
 THE FOREIGNER, Francie Lin

最優秀ペイパーバック賞
 CHINA LAKE, Meg Gardiner

最優秀短篇賞
 "Skinhead Central"、T. Jefferson Parker(in THE BLUE RELIGION)

 その他の部門については、MWAの公式サイトをご覧ください。

 ついでと言っちゃナンですが、メアリ・ヒギンズ・クラーク賞にビル・フロイドの『ニーナの記憶』(北野寿美枝訳/ハヤカワ文庫NV)が選ばれましたね。ずっと気になっていたんですが、やっぱり読まなければ!

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The International Thriller Awards ノミネート発表

 International Thriller Writers(ITW) が主催する2009年度 International Thriller Awards のノミネート作が発表になりました。

BEST THRILLER OF THE YEAR
 HOLD TIGHT, Harlan Coben
 THE BODIES LEFT BEHIND, Jeffery Deaver
 THE BROKEN WINDOW, Jeffery Deaver
 THE DARK TIDE, Andrew Gross
 THE LAST PATRIOT, Brad Thor

BEST FIRST NOVEL
 CALUMET CITY, Charlie Newton
 CHILD 44, Tom Rob Smith
 CRIMINAL PARADISE, Steven M Thomas
 SACRIFICE, S. J. Bolton
 THE KILLER'S WIFE, Bill Floyd

BEST SHORT STORY
 "Between the Dark and the Daylight", Tom Piccirilli (EQMM September/October 2008)
 "Last Island South", John C. Boland (EQMM September/October 2008)
 "The Edge of Seventeen", Alexandra Sokoloff (THE DARKER MASK)
 "The Point Guard"by Jason Pinter (KILLER YEAR)
 "Time of the Green", Ken Bruen (KILLER YEAR)

 受賞作の発表は7月11日、ニューヨークの〈グランド・ハイアット・ホテル〉にて。

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アガサ賞ノミネート発表

 マリス・ドメスティック主催によるアガサ賞のノミネート作品が発表になりました。主要3部門のノミネートは以下のとおり。受賞作の発表は、ヴァージニア州アーリントンで5月2日(現地時間)におこなわれます。

最優秀長篇賞
 SIX GEESE A-SLAYING, Donna Andrews
 A ROYAL PAIN, Rhys Bowen
 THE CRUELEST MONTH, Louise Penny
 BUCKINGHAM PALACE GARDENS, Anne Perry
 I SHALL NOT WANT, Julia Spencer-Fleming

最優秀処女長篇賞
 THROUGH A GLASS, DEADLY, Sarah Atwell
 THE DIVA RUNS OUT OF THYME, Krista Davis
 PUSHING UP DAISIES, Rosemary Harris
 DEATH OF A COZY WRITER, G.M. Malliet
 PAPER, SCISSORS, DEATH, Joanna Campbell Slan

最優秀短篇賞
 "The Night Things Changed", Dana Cameron (from WOLFSBANE AND MISTLETOE)
 "Killing Time", Jane Cleland (AHMM, November 2008)
 "Dangerous Crossin", Carla Coupe (from CHESAPEAKE CRIMES 3)
 "Skull and Cross Examination",Toni L.P. Kelner (EQMM, February 2008)
 "A Nice Old Guy", Nancy Pickard (EQMM, August 2008)

 その他の部門のノミネートはマリス・ドメスティックの公式サイトをごらんください。

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