天才たちの値段
いや~、いいね! 短大の美術講師佐々木と、天才的な鑑定眼(いや鑑定舌と言うべきか)を持つ神永が、美術品にまつわる謎を解き明かしていく連作短篇集。なんていうのかな、ものすごい蘊蓄を披露しているというよりは、中学や高校くらいで習ったなーというかすかな記憶を呼び覚まし、そこからイメージが広がっていくような感じがあるんですよね。
たとえば、タイトル作はボッティチェッリの作かもしれないという絵の真贋をめぐる話ですが、誰でも知っている「春」という絵を例に引き、それをうまく使って架空の絵をイメージさせてくれる。ほかの作品もそうで、知的昂奮を刺激されるというよりは、むしろ話のなかにすっと入って、自分もそこで見ているみたいな感じをおぼえます。
すごく深いとか、すごく感動するというんじゃないけど、これだけの短さのなかで、凡人の佐々木と天才の神永の知恵くらべが楽しめ、同時に、しっかりどんでん返しもあってエンタメ性も充分。話題も、前述のボッティチェッリやら古地図やら涅槃図やらフェルメールやらと多岐にわたり、あきさせません。欲を言えば、語り手の佐々木のキャラが弱いのがちょっとかな。でも、人が死なない、こういう問答みたいなミステリもいいですよね。
■書誌情報
『天才たちの値段』門井慶喜/文藝春秋(2006.09.15発行)
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