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ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ

ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ (ヴィレッジブックス) “ジョー・R・ランズデール絶賛!”の帯に、こってり濃ゆくて、えげつない話かと思いこんで覚悟して読んだところ……これって……思いっきりコージーだよね。まあ、主人公は元大工というガテン系の男性で、しかも暴力沙汰をおこして服役、現在は仮釈放中の身という設定をコージーと言っていいのか迷うけれど、主人公はなかなかにナイスガイだし、地域の人との交流がしっかり描かれているし、登場人物のキャラも立ってるし、全体としてとてもすがすがしいんです。

 仮釈放中の主人公テリー・サルツは親友のダニーのもとに身を寄せ、近くのピザ屋で配達係として働きはじめる。すぐに仲間とも打ち解け、また、元大工の腕を見込まれて、ちょっとした大工仕事も舞い込んで、順調に更正への道を歩き出した矢先、同じく配達係のウィットネス、ことエド・ハヌスが店の駐車場で刺殺体となって発見される。警察の捜査は遅々として進まず、テリーは店の仲間とともに犯人捜しに乗り出すのだが……。

 正直、事件そのものはどうでもいいというか、話を進めるための道具でしかない感じなんですよね。“あ、こいつが犯人だ”とぴんときたやつが本当に犯人で、かなり脱力(^^;)。でも、なんて言うのかなあ、この本の魅力はテリーと、その仲間たちの和気藹々とした雰囲気じゃないかと思うんです。

 主人公のテリーはもさもさの黒い長髪をひとつに束ねて、両端が垂れ気味の口ひげを生やしていて、格子柄のネルシャツにジーンズ、足もとはハイカットか作業靴と、ちょっと見には怖い風体なんだけど、大工という仕事をこよなく愛するナイスガイ。彼に手を差しのべる親友のダニーも、ピザ屋で同僚となるバンプやグラフも裏表がなくて、絵に描いたような“いいやつ”。とにかく、ほとんどの登場人物が一癖もふた癖もあるけど、とてつもなくいい人ばかり。ふだん、ねじくれた連中の話ばかり読んでるわたしじゃなくても、世の中そんなにうまく行くかよと言いたくなるような展開なんだけど、いまの世の中ではかえってこういう話が新鮮に思えちゃうから不思議です。語り口のせいなのか、主人公の魅力なのか、ちっとも陳腐な感じがしないしね。

 これ、シリーズになっていて、あと2冊出ているそうなんですが、ぜひ訳してほしいなあ。だって、テリーと別居中の妻とはどうなるのかが気になるんだもの。気になると言えば、弁護士のバドの妹のマイクの存在も異様に気になります。いろんな意味で強烈なわりには、出番少なすぎ。

■書誌情報
『ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ』L・T・フォークス/鈴木恵訳/villagebooks(2009.05.20)
COLD SLICE by L. T. Fawkes(2003)

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